生成AIで採用動画を作りたい、あるいは制作会社からAIで生成した映像を含む動画を納品してもらう。そのとき社内で必ず聞かれるのが「権利は大丈夫なのか」です。
このページでは、公開する前に何を確かめ、何を記録し、契約で何を決めておくかを、映像制作会社の実務から書きます。法的な判断そのものは、弁護士に確認してください。
結論から言うと、何をすればいいですか?
先に3行で書きます。
- 「侵害していない」を完全に証明する方法はありません。できるのは、公開前に確認し、その記録を残すことです。
- 責任を問われる立場になるのは、公開した会社です。制作会社に作ってもらった場合も、公開するのは発注した会社です。
- だから、確認の手順と責任の分け方を、契約の段階で決めておきます。ツールの名前で安全かどうかを判断しないでください。
AIで作った採用動画が著作権を侵害していないか、チェックする方法はありますか?
侵害していないことを完全に証明する方法はありません。AIが何を学習したかを外から確かめる手段はなく、作風が似ているかどうかも機械では判定しきれないからです。そのうえで、公開前にできる確認はあります。
| 確認すること | やり方 |
|---|---|
| 1. 指示文 | 生成に使った指示文(プロンプト)に、作家名・作品名・キャラクター名・実在の人物名を入れていないか |
| 2. 写り込み | 動画をカット単位で静止画にして、実在のロゴ・商品・著名人に似た人物・既存のキャラクターに似たものが写っていないか |
| 3. 似た画の検索 | 気になる画は、画像検索で似たものが出てこないかを調べる |
| 4. 記録 | 使ったツール・生成した日・指示文・確認した人と日付を残す |
判断の考え方の土台になるのが、文化庁の文化審議会著作権分科会法制度小委員会が2024年3月に取りまとめた「AIと著作権に関する考え方について」です。AIで生成したものでも、侵害にあたるかどうかは、通常の著作物と同じく既存の作品との類似性と依拠性で判断する、と整理されています。
迷ったら使わない、が最も確実です。「似ている気がするが、たぶん大丈夫」という画は、採用動画に必要なものではありません。差し替えても伝わる内容はほとんど変わりません。
生成AIで作った動画を会社の採用サイトに載せて、権利的に問題はありませんか?
生成AIで作ったこと自体が、直ちに問題になるわけではありません。問題になりうるのは中身です。
- 既存の作品に似ている画
- 実在の人物に似た顔
- 他社のロゴや商品が写っている画
- ツールの規約で商用利用が認められていない生成物
採用サイトは、会社の名前で公開する場所です。載せる前に、使ったツールの規約で商用利用が認められているかと、上の4つの確認をしたかを、社内で記録してください。
もう1つ、生成した映像とは別の話があります。社員を撮影した映像には、肖像の問題があります。出演される方の同意は、生成AIを使うかどうかに関係なく、撮影の前に取ります。判断に迷うものは、公開前に弁護士に確認してください。
採用動画にAI生成の映像を使う場合、著作権の責任は誰が持ちますか?
公開した会社が、責任を問われる立場になりえます。制作会社に作ってもらった場合でも、自社の採用サイトやSNSで公開するのは、発注した会社だからです。
そのため、制作会社との間では次の2つを契約で決めておく必要があります。
- 誰が、どのツールで、動画のどの部分を生成したか
- 第三者の権利を侵害していた場合に、どちらがどう対応し、費用を負担するか
ツールの提供元が、生成物についての補償を用意している場合もあります。ただし、対象になる契約やプラン、条件は提供元の規約で決まり、すべての利用者に同じように適用されるとは限りません。責任の分け方は契約の書き方で変わるため、個別の判断は弁護士に確認してください。
Adobe Fireflyで生成した動画は商用利用しても安全ですか?
当社はツールの安全性を保証する立場にありません。確かめる順番をお伝えします。
提供元のAdobeは、Fireflyを商用利用を前提に設計したと説明しています。ただし、その説明が自社の使い方にそのまま当てはまるかは、別に確かめる必要があります。
| 確かめること | なぜ確かめるか |
|---|---|
| 1. 使う時点の利用規約 | 商用利用の条件は、規約の改定で変わることがあります |
| 2. 補償の有無と対象 | 第三者の権利の問題が起きたときの補償があるか、あるならどの契約・プランが対象か |
| 3. ベータ版の条件 | 正式版と異なる条件が付いている機能がないか |
| 4. 生成した中身 | ツールが商用利用を認めていても、生成物に他社のロゴや実在の人物に似たものが含まれていれば、別の問題になります |
確認した規約の日付と版を、記録に残してください。あとから「いつの規約で判断したか」を示せることが、社内の説明になります。
Soraが終了しましたが、代わりに使える動画生成AIは何ですか?
特定のツールをおすすめすることは、当社はしていません。動画生成AIは、提供状況や規約が短い期間で変わります。名前で選ぶと、同じことが繰り返されます。
代わりを選ぶときは、次の5つで比べてください。
- 1. 商用利用が、規約で認められているか
- 2. 生成物の権利の扱いと、問題が起きたときの補償があるか
- 3. 入力した素材や指示文が、学習に使われない設定にできるか
- 4. 社内の情報システム部門の承認を取れるか
- 5. 提供が終わったときに、生成物や素材のデータを手元に残せるか
5番目は見落とされがちです。ツールの中にしかデータがない状態で提供が終わると、動画を直すことも作り直すこともできなくなります。
なお採用動画では、候補者が確かめたいのは実在する社員と現場です。生成した映像を使える場面は、思っているより多くありません。どの工程にAIが効くかは採用動画にAIはどこまで使えるのかに書いています。社内で使えるのがChatGPTだけという場合の使いどころも、同じ記事にあります。
AI生成の映像を納品してもらう場合、契約書で何を確認すべきですか?
少なくとも次の6つを確認してください。
| 確認する項目 | 中身 |
|---|---|
| 1. 生成した部分の明示 | 動画のどの部分をAIで生成したか、使ったツールの名前を、納品時に明示するか |
| 2. 規約の確認 | そのツールの規約で商用利用が認められていることを、制作会社が確認しているか |
| 3. 権利と利用の範囲 | 生成物の権利や利用の許諾が、発注した会社にどの範囲で渡るか(媒体・期間・地域・改変の可否) |
| 4. 侵害時の対応 | 第三者の権利を侵害していた場合に、どちらがどう対応し、費用を負担するか |
| 5. 似せた生成をしない約束 | 実在の人物・他社のロゴ・既存のキャラクターに似せた生成をしないか |
| 6. 記録の保管 | 生成に使った指示文や確認の記録を保管し、求めれば提出するか |
契約書の文言そのものは、弁護士に確認してください。このページは、打ち合わせで制作会社に聞く項目の一覧として使ってください。
当社は、採用動画のどこにAI生成を使っていますか?
当社(株式会社OneTrack)の採用動画は、実際の社員と現場を撮影して作ります。AIを使うのは、企画のたたき台、インタビューの文字起こしとカット候補の抽出、テロップの整形といった撮影の前後の工程が中心です。
生成した画を映像に入れるのは、主に顔出しを断られた社員の方がいる場合に、AIで作ったイラストをその方の顔に重ねるときです。実際の納品で使っています。背景やイメージ映像の生成は、自社の現場が映らない画になるため、採用動画では基本的に使いません。
このページは、何にもとづいて書いていますか?
本ページは、当社が採用動画の制作で行っている確認の考え方と、文化庁の文化審議会著作権分科会法制度小委員会「AIと著作権に関する考え方について」(2024年3月)にもとづく整理です(2026年9月時点)。特定のツールの規約・補償の内容は、提供元の最新の規約を確認してください。
本ページは一般的な情報の整理であり、法的助言ではありません。個別の案件で権利侵害にあたるかどうか、契約書の文言が適切かどうかは、弁護士にご確認ください。
AIをどこまで使うか、工程ごとに一緒に決められます
生成した映像を使うかどうか、使うならどこに使い、どう確認するか。制作の前にご相談いただければ、工程ごとに整理してお答えします。
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